地中海のキプロスでは、今年(2023年)の1月からFIPを発症するネコが急増しているそうです。
キプロスには100万匹以上のネコがいるそうで、現在(7月末)までに推定で8000匹が死んだと言われています(30万匹が死亡という説もあります)。
このため、8月8日から急遽、新型コロナ治療薬のモルヌピラビル(販売名ラゲブリオ)のネコへの投与が始まったそうです。これはヒト用に備蓄していたもので、1錠2.5 eurosで配られるそうです。
しかし、野良ネコや地域ネコも多く、実際の投与は困難になりそうです。
https://forbesjapan.com/articles/detail/65227
また、イギリスかオーストラリアから、Bova社の GS-441524製剤を輸入するという話も出ているようです。
https://icatcare.org/fip-outbreak-cyprus/
通常、FIPの発症率はネコの1%程度と言われていますが、キプロスでは40%以上の発症率と推定されています。
そこで現在、各国の研究機関がこのFIP感染爆発の原因を調査中ですが、なんらかの凶悪な遺伝子変異が猫コロナウイルス(FCoV)に生じたものと推察されています。(この変異株はFCoV-23と呼ばれています)
それにより
1) FCoVの感染力がきわめて強力になった
2) FCoVからFIPVへの変異率が高くなった
3) FIPVが水平感染(ネコからネコにうつる)しやすくなった(従来、FIPVの水平感染は起こりにくいと考えられていました)
の3つの可能性が想定されています。
いずれにせよ、この変異ウイルスが周囲のヨーロッパ各国、さらにはアメリカ・アジアにまで広がれば、壊滅的打撃が予想されますので、各国が非常に注視しています。日本にとっても極めて憂慮すべき事態と思われます。
Why deadly cat virus in Cyprus could be 'potentially catastrophic for UK'
BVA statement on FIP cases in cats in Cyprus
COVID Drugs Are a Miracle Cure for Cats
(続報)
その後、原因となるウイルス(FCoV-23)が見つかりました。
詳細は次頁に。